背景

ロボットの活用範囲は様々な環境に拡がっており、多様なニーズに応えるため、高トルクを伝達可能な高強度部材をより精密に成形することが重要となってきています。具体的には、高張力鋼板やアルミニウム合金といった素材を適用し、こうした板材についての成形性、破断・スプリングバックなどの予測を高精度に行うことが重要な課題となっています。
また近年、特に自動車業界において顕著にみられるように、計算機技術の急速な進歩と開発工期短縮ニーズの高まりから、開発設計・生産技術設計工程において試作ロットからデジタルロットへの移行が進み、有限要素法を中心とした数値シミュレーションの活用と解析精度向上が急務となっています。本研究では、このような背景を鑑み、従来の板材数値シミュレーションに加え、加工硬化、降伏応力異方性、変形異方性などの材料挙動を考慮しながら、より再現性の高い材料モデルを提案します。

目的

  1. 非関連流れ則に基づいた異方性を高精度に再現可能な材料モデルの構築
  2. 板材の変形特性に対する影響の解析と調査
  3. 材料モデルをFEMシミュレーションに適用することでモデルの有効性を検証
  4. 高精度の解析手法適用による生産技術工程の効率化

理論

塑性変形を表現する材料モデルは、降伏条件式、塑性流動則、加工硬化則の三つから構成されます。HILL48の二次降伏関数は平易な式形式で使いやすい材料モデルであることから、現在も生産の現場ではよく使われています。しかし、HILL48では降伏応力の異方性と変形異方性の両者を同時に満足させることが困難であり、結果として形状等の再現性が劣る場合があります。そこで、本研究では非関連流れ則を用いて、塑性ポテンシャル関数を降伏関数とは独立に定義することにより、より高精度な材料モデルの構築を目指します。

図1.成形に影響する二つの異方性

技術課題

1.異方性パラメータの決定と取得方法(図2)。

  • 面内3方向の単軸引張り試験
  • 液圧バルジ試験
  • せん断試験

2.非関連流れ則を実現するために、ABAQUSでUSER SUBROUTINEを作成します。

3.材料モデル有効性の評価と改善。

  • 深絞り試験
  • 穴広げ試験
  • テンションレベリング

図2.異方性パラメータを同定するための材料試験

初年度の取り組み

 

HILL48を基づいた非関連流れ則を用いた材料構成モデルを用いて、単軸引張試験と円筒深絞り試験のFEM解析を行いました。実際の試験結果との比較を図3に示します。

まず単軸引張試験から、材料の異方性を正しく表現できていることを検証することができました。また、本研究で構築した非関連流れ則を構成式に使用し、円筒深絞りをシミュレーションした際、変形の異方性が特徴的に表れるブランクの耳形状を精度よく再現できていることを確認しました。

図3SPCE鋼板のシミュレーションの結果

 

 

担当研究室

東京大学 生産技術研究所 第2部 柳本研究室

〒153-8505 東京都目黒区駒場4-6-1東京大学生産技術研究所 De409
Tel: +81-3-5452-6204 (ex. 57451)
Fax: +81-3-5452-6204 (ex. 56204)
http://www.yanlab.iis.u-tokyo.ac.jp/