背景

樹脂の射出成形品の表面に電気配線が直接形成された複合部品を成形回路部品(Molded Interconnected Devices、 以下MID)と呼びます。MIDは電子機器における筐体としての機械的な役割と配線としての電気的な役割を併せ持つため、配線基板を用いるよりも製品の部品点数や寸法を削減することができます(図1)。また構造体の表面へ配線を直接配置するため、立体的な配線による機器の高密度化や高機能化にも有効であり、MIDはスマートフォンなどの寸法の小型化が求められる様々な電子機器に利用されています。

図1.成形回路部品[LPKF]

 一方、従来のMID工法では、まず射出成形により樹脂構造体を成形し、その後、二次成形や光硬化性樹脂を用いたマスキング、あるいは直接的なレーザの照射などにより構造体の表面への配線パターンの形成を行います。そのため、従来の工法では構造体の陰面への選択的な配線形成は困難であり、これによりMIDは表面的な配線として利用されることが多いです(図2)。しかし、仮に陰面への配線形成が可能となれば、将来的にMIDをアクチュエータなどのメカトロデバイスとして応用することも期待できます。

図2.従来のMID工法における課題

 

 

目的

付加製造は材料を結合していくことで任意の3次元形状を実体化できる工法して知られてます。その中でも、レーザ焼結造形と呼ばれる方式では、多様な材料に対応可能であり、高強度かつ高微細性の造形物が得られることが特徴です。これは薄く敷いた材料の粉末にレーザの照射を選択的に照射することでエネルギーを与え、溶融させるプロセスを繰り返すことで3次元形状を実現しています(図3)。

             図3.レーザ焼結法

また、MID工法にはLaser-Direct-Structuring(LDS)と呼ばれるがあります。これは熱可塑性樹脂に添加物として有機金属錯体が混合されており、レーザ照射により有機金属錯体から金属原子が遊離する性質を利用して、形成された構造体の表面にレーザ照射を行うことで無電解めっきを選択的に出現させる手法です(図4)。

 

             図4.Laser-Direct-Structuring

本研究では、これらの付加製造技術とMID工法を利用することで、MIDにおける配線領域の制限を取り払い、陰面に対しても自由な配線形成を可能にすることを目的としています。手法としては、レーザ焼結造形における造形過程の途中に、活性化を行うことで陰面への配線の実現を目指しています。

            図5.陰面への配線

 

技術課題

レーザ焼結造形では通常粉末材料を融点付近まで予熱した上でレーザ照射を行います。しかし、LDSで使用する材料は、一般的にレーザ焼結造形で用いられる材料と比較して高い融点を有しており、適当な予熱を行うことが困難です。また、積層途中でLDS材料の活性化を行うため、LDS材料の焼結と活性化のモード切替を任意に行うことが必要です。その際、(1)予熱の温度、(2)レーザのビーム径を変更することができないため、焼結と活性化のモード切り替えをレーザの照射条件のみで行わなければなりません。

    図6.LDS材料            図7.レーザの照射パラメータ

 

初年度の取り組み

本研究室が独自に研究を行ってきた低温造形の技術を利用することで、LDS材料の3次元造形を可能にしました。また、造形物に対してLDS材料の活性化を行い、選択的な無電解めっきの形成できることを確認しました(図8)。積層途中で焼結と活性化のモードを切り替えての造形は、適切なレーザ照射条件を調査することで可能にし、造形物の陰面への配線に成功しました(図9)。

                        図8.LDS材料の造形物

 

                        図9.陰面への配線

担当研究室

東京大学生産技術研究所 第2部 新野研究室

〒153-8505 東京都目黒区駒場4-6-1東京大学生産技術研究所D棟
De-304号室 - 新野教授(TEL:03-5452-6216,FAX: 03-5452-6214)
De-305号室 - 室員室・実験室(TEL:03-5452-6215)

http://lams.iis.u-tokyo.ac.jp/index.html